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地域の救急医療を支える救命救急センター

聖マリアンナ医科大学救命救急センターは、神奈川県川崎市の北部に、県内初の救命救急センターとして1980年に設立された。救急医療は院内すべての講座、診療科、診療部門が協力し合って成り立つが、そのなかでも核となる講座として聖マリアンナ救急医学が設立されたのは、1998年である。以降、地域救急医療を担う中核として働き、2009年の来院患者は、救命救急センターで9,264人、夜間急患センターで17,047人を数えた。
日本の救急医療は、ERにおける救急患者の初期診療と、病棟(ICU、HCU)における重症患者治療・集中治療の2本の柱から成る。年間26,000人を超える救急患者のうち、最重症患者に対応するのが救命センター病棟である。2009年は、ICU(7床)で993人、HCU(23床)で750人の救急入院患者に対応した。救急講座スタッフ15人、整形外科医1人、救命病棟専任薬剤師1人に加え、当センターの特徴として救急放射線医3人が常駐し、緊急画像診断やIVRに対応している。また、後期・初期臨床研修医10人、看護師90人、CE部2人が加わり、充実した救急医療、ならびに高度先進医療を追求している。救急指導医4人が病棟の集中治療を、7人の指導医が外来ERを担当し、中堅の救急医と研修医は2つの部門を経験しながら研鑽を積んでいる。東日本大震災では、DMAT並びに救護班支援に積極的に取り組んでいる。
救命救急センター内のICU・HCUにおける集中治療

当センターの勤務はER外来、病棟勤務ともに12時間交代のシフト制で運用され、メリハリのある充実した医療業務と個人の生活時間を保障している。年間を通して午前8時から1時間、朝カンファレンスによって患者状態、治療方針の申し送りを行う。9時からは病棟ICUで複数の指導医とともに回診を行う。回診においては特に教育的回診を心がけている。指導医にとっては"教えることは学ぶこと"の実践の場として、後期研修医にとっては初期研修医を指導する"屋根瓦式"教育の実践の場として、誰もがその重要性を認識する場である。
「救急医・集中治療医とは generalist であるべき」が講座のモットーで、幅広く各領域の重症患者を受け入れ、院内各専門科との協力体制のもとに集中治療を行っている。ERを通して入院した重症患者、緊急手術後の患者、複数科にまたがる重症患者が主な対象患者であるが、それ以外にも産婦人科、外科、内科系の院内各科からの重症患者治療依頼にも応じている。
その他の特徴として、別棟にシミュレーションセンターを持ち、ここで経皮的気管切開、中心静脈穿刺、気道困難症に対する処置の実技指導や、RRS(Rapid Response System)の基本である 米国集中治療医学会FCCS(Fundamental Critical Care Course) なども中心となり開催している。
RRSは2010年4月から始動し、今まで30例以上に対応してきた。院内での評価は非常に高く、このシステムにより多くの症例を救い、院内でのpreventable deathを防ぐことができている。
集中治療部門の特徴として、(1)EBMに基づいた治療を実践し、欧米式ティーチングスタイルを実施している、(2)Pittsburgh大学で米国集中治療専門医、UCLAで米国感染症専門医を取得した指導医(藤谷茂樹准教授)が指導する、(3)診療に注ぐ努力と同様に集中治療医の育成に多大な努力をはらっている、(4)分院である聖マリアンナ横浜市西部病院・川崎市多摩病院と、本院との診療の質の向上・教育の均一化を図るべく人的交流が盛んである、(5)救急・集中治療医は generalist であるべきと考え、これを目指している、(6)journal review、journal club、M & M、後期研修医が独自に企画した勉強会など、ほぼ毎日何かしらが開催されている、などが挙げられる。
研究では、PiCCOによる循環動態の研究、microdialysis による末梢組織酸素代謝の研究、shockの病態、集中治療領域における重症感染症の研究、外傷治療、血液浄化療法などが講座の主なテーマである。
取得可能な資格は、主に救急医学専門医、集中治療専門医、認定内科医であり、また海外留学(現在2名)などにも積極的な支援を行っている。
総合医をベースに置いた教育(東京ベイ浦安市川医療センター)
2012年4月に新規開院する東京ベイ浦安市川医療センターは、generalistを育成することを目的として設立され、日本初のACGME方式(米国臨床研修制度)研修を採用し、多数の米国専門医を保有する。聖マリアンナ医科大学病院救急医学教室の関連病院となり積極的な人事交流がもたれ、総合内科・救急・集中治療の研修を積極的に支援する。バランスのとれた医師を育成することに主眼を置いている。