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大阪市立総合医療センター

地下鉄谷町線「都島」駅下車2番出口
→西へ 徒歩約3分
JR大阪環状線「桜ノ宮」駅下車
→北へ 徒歩約7分
地図

はじめに

大阪市制100周年事業の一環として「市立医療機関の体系的整備」が1983年に提言され、市立病院5病院を統廃合して大阪市北部の梅田に近い都島区に新病院を建設することが決定されました。その10年後の1993年、高度医療の提供を掲げて新生児から成人までを扱い、48診療科を備える約1,000床の総合病院として「大阪市立総合医療センター」が開院しました。同センターには救命救急センターも併設され、集中治療室は6床あります。一方、院内には重症病棟群として術後と院内救急を扱う集中治療部が10床あり、それ以外に、CCU(冠疾患集中治療室)、NICU(新生児集中治療室)、HCU(High Care Unit)、MFICU(周産期集中治療室:本年末に開設予定)を備えています。

開院以来、1995年の阪神大震災、1996年の堺市における腸管出血性大腸菌O157:H7による集団食中毒事件、2003年のSARS対策、2009年の新型インフルエンザ集団発生などで中心的な役割を担う傍ら、手術件数も年間6000件を超え、集中治療部への入室は年間約800例を数えるようになりました。入室患者は、心臓外科、小児心臓外科を中心とする心臓外科術後で、年間約450例。それ以外に、脳外科、小児脳外科、消化器外科、小児外科などの術後患者が入室しているほか、緊急入室症例も年間約100例あります。基本的には院内急変ですが、病態や年齢によっては院外からの救急搬送にも対応しています。さらに、当集中治療部の特徴として、新生児から15歳までの小児症例が多いことがあげられ、全入室患者の約40%を占めています。

集中治療部で患者の病態を把握し、適切な診断を下して治療方針を決定していくのはICU専従医です。当院は開院以来、いわゆる“closed ICU”として集中治療に臨んできました。現在スタッフは5名、その他に後期研究医が2名、前期研究医1名がいます。また、研修医も1~3ヵ月のタームで研修を行っています。

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治療内容と日課

集中治療部における日常は、全体の約85%を占める術後管理が中心となります。特に心臓外科や小児心臓外科は病態が複雑であることから細心の注意が必要で、治療方針をめぐって主治医との間で議論になることもしばしばです。基本的には、このディスカッションをもとにICU担当医(ICU専従医)が治療方針を決めていきます。緊急入室症例も同様で、大まかな基本方針を主治医と詰めたあとは基本的にICU担当医が治療方針を決めていきます。たとえば、鎮静方法、人工呼吸の設定、カテコラミンの選択・増減、輸液量、抗生剤、栄養、さらには各種血液浄化法、IABPやPCPSなどを細かくICU担当医が毎朝決定していくのですが、時には上級医であるスタッフと相談しながら、また、論文等を参考にしながら治療方針を決めていくのです。

具体的な日課としては、朝8時から当直医による主治医と専従医に対する患者の夜間の状態に関するプレゼンテーションがあり、そこで治療方針を決定するためのディスカッションを主治医とともに行います。その後、朝9時から、各症例ごとにICU担当医、上級医、指導医、担当看護師、当日のリーダーがベッドサイドに集まり、ICU担当医が患者の病態、全体の治療方針、当日の治療内容等に関するプレゼンテーションを行い、上級医、指導医、担当看護師間で病態と治療方針についてディスカッションをして、最後に当日のタイムテーブルを決めています。基本的には各症例あたり10分程度ですが、議論が白熱することもあれば、さらっと終わることもあります。

ラウンドは、退室する症例を除いては通常約5例、40分程度で終わることが多く、受け持ちでない場合は基本的にディスカッションへの参加は義務づけていないので、その間、決定した治療方針に従って治療は進んでいきます。このラウンドには、医師・看護師間における病態・治療の認識を同じくしようとする狙いがあり、導入して約1年間とはいえ、評価はおおむね良好です。また、午後1時からは再び専従医と看護師(週2回は栄養士も参加)全員で簡単なプレゼンターションを行い、治療の進行具合を再確認しながら方向性の修正をしています。最後に夕方、医師だけで当直医への申し送りをして1日が終了します集中治療部では術後症例が中心であるため、実は夕方からの仕事が多くなるのですが、基本的には朝8時から夕方6時くらいまでで勤務は終了しまし、当直の場合も翌日は休みで朝から帰宅できます。また、夕方からの仕事量に対応するため、当直明けの翌日は正午から午後9時までの勤務シフトとなります。

集中治療部には、新生児から成人までさまざまな患者が入室してきます。特に小児は当院が小児症例をたくさん扱っていることもあり、常にめずらしい症例が入室しています。また、血液浄化法も積極的に施行しており、小児例でもCHDやCHDFを積極的に行って、救命につなげています。PCPSやECMOも躊躇せずに導入できる点が当院の特徴だと思っています。その結果、重症症例が救命できたときは本当にうれしいものです。患者にすれば、重症とはいえ一通過点である集中治療部に退院時に挨拶に見えることもしばしばあり、スタッフの励みになっています。

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研修・研究

毎週火曜日には「Journal club」と前週の「M&M」を行っています。約1時間ですが、Journal clubでは最近話題の論文に対して批判的吟味を加えて医局員間でディスカッションし、今後、当ICUでも試行していくべきかどうかについて議論しています。また、前週のM&Mでは特に1例を取り上げ、治療が適切であったかどうかについて的を絞った議論をしています。時には時間切れで結論が出ないことも多いのですが、指導医にとっても有用な情報が得られ、非常に勉強になります。

また、救命救急センターとの合同カンファランスも週1回行っており、今後は、集中治療部に関わる各科との合同カンファランスを計画しています。その他、海外を含む学会での発表や論文作成についても積極的に指導しています。国内留学や海外留学の制度も充実しており、現在までにオーストラリアと英国に留学生を送った実績があります。AHAの蘇生教育であるBLSやACLS、PALSはもちろん習得可能ですが、現在、FCCSやPFCCSに関しても西日本の拠点として活動中で、単に受講するだけでなく、インストラクターとして活動することも可能です。今後はDAMなどさまざまなシミュレーショントレーニングを取り入れて、臨床に生かしていこうと考えています。また、JSEPTICの活動にも積極的に参加しており、今後は、関西での拠点になれるよう努力しています。

臨床研究だけでなく、サイトカイン・エンドトキシンの測定などといった基礎研究を行うことも可能で、実際、EAAの測定に関しては日本での“第一陣”として注目を浴びた実績があります。小児と成人の症例数も豊富であることから、臨床であれ基礎であれ、さまざまな研究ニーズに応えられる施設ですが、まだまだマンパワーが十分ではなく、今後スタッフやレジデントが増えてくれば、多方面に進出していきたいと考えています。

当院の研修制度としては、研修医に集中治療部は必須とはなっていないものの、選択科目になっており、毎年多くの研修医が集中治療部を訪れています。レジデントは、育成コースとして救命救急センターと集中治療部、さらに関連する希望科を3年間かけてローテーションします。6年目以降のシニアレジデントは、基本的には集中治療部に勤務しますが、治療技術の習得のために他科で研修することももちろん可能です。

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救命救急センター

救命救急センターの入院者内訳

救命救急センターでは、多発外傷、重度熱傷などの外科系救急、多臓器不全、敗血症、重症呼吸不全、薬物中毒、重症代謝不全および各種ショックなどの内科系救急まで、各科の積極的な協力と関与により集学的治療が可能となっています。2009年は、救急隊からの直接搬送例818例、他の医療機関からの搬送440例をはじめ、2,150例の症例に対応しました。

小児救急においても、小児救急科との円滑な連携および小児科出身の医師が中心となり、府内をはじめ近隣府県からの小児重症救急症例の受け入れを行っています。2009年は、6歳以下の入院は502例、そのうち集中治療管理が必要な重症例は59例と、小児の救命救急センターとしての役割も十分に果たしています。2009年11月前後に発生した新型インフルエンザの重症患者の受け入れも積極的に行いました。今後も、大規模災害時には大阪府の災害拠点病院として被災傷病者の受け入れを積極的に行うほか、多数被災者災害現場への出動体制も整備しています。

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大阪市立総合医療センター 集中治療部 嶋岡
h-shimaoka@med.osakacity-hp.or.jp
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